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    アニメ・ラノベの同人小説倉庫

    □ ゼロの使い魔 □

    ZEROのつかいま十二 王宮陰謀劇 Ⅴ

    十二 王宮陰謀劇 Ⅴ

     長い長い一夜が明けた。光が差さぬ塔牢でそれと分かるのは、テファニアのいるジャングル風のステージが朝を迎えて白く輝いていたからだ。
    「一睡もできなかった……」
     才人が呆然とつぶやく。据え置きの濁った水差しから埃の浮いたコップに水を入れ、鼻をつまんで喉に流し込んでも、眠気はとれず、意識は奇妙に覚醒したままだった。
     ひどい頭痛がする。
     おかしな映像はあいかわらず見えるが、テファニアはいつのまにか姿を消していた。

    ***

     ガリアの戦役が終わって、男達が帰ってきた。戦で手柄を立てたものたちがガリアから外貨を得てきたため、国内はちょっとしたお祭り状態だ。道のそこここに花びらが撒かれ、市の日でなくとも通りに屋台が山ほどたっている。ガリアの美人を堪能してきた軍はトリステインに帰ってきてからもまだその攻撃性をなだめきれてはいなかった。高い酒が飛ぶように売れ、つきることのない手柄自慢で街は眠ることなく機能している。戦争のために準備された鎧かぶとに宝剣の類を男は好んで携行し、口論から小競り合いに発展することもしばしばだった。
     治安が悪くなっていると、少女は感じていた。治安、という言葉すら知らない、街角に立つ半乞食の彼女は、戦役で男がいなくなったときのひもじさに比べたらずっとマシだと自分に言い聞かせ、今日の客を取っている。
     殴られた右頬が熱かった。そっと触れてみたが、陥没はしていない。たいしたことはないとわかっていながら、受けたショックは大きかった。
     ――女をいたぶって楽しむ男が増えた。
     少女の服を刀剣で裂き、乳首にぴたりと剣先を当てる。哀願するような微笑を浮かべる少女を満足げに見下ろし、男は下半身を取り出した。
     少女の身体に香油を垂らし、股間にも入念に塗りたくると、愛撫なしで突っ込んだ。
     ただ挿入するためだけのわずかな潤いしか与えられていないそこは、かなりの狭窄具合で、直線的に男の性感を高めているらしい。痛いぐらいの摩擦でないと、男は興奮しない性質らしかった。
     涙を浮かべて逃げようともくろむ少女を、男は力でねじ伏せた。目の色には愉悦、力の強弱だけで思うままにできる事実を、この男は楽しんでいる。
     手も足もひねりあげられ、あどけない顔立ちにあらためて涙が浮かぶ。恐怖以上に、痛みが催す涙だった。
     男はその顔をにやにや見下しながら一度目の射精。
     男は剣の切っ先を、出したばかりの白い粘液が伝う入り口にあてがった。嫌がる少女にたっぷりと許しを乞わせ、怯えさせて、下卑た笑いを浮かべている。
    それから、男はその剣をなんのためらいもなく中に挿入した。
     少女の絶叫は、ふさがれたぶ厚い手のひらにさえぎられた。
     痛みと灼熱感で脳が融けそうだった。滂沱の涙が勝手に流れ、意識が近くなったり遠くなったりする。
     そこに男は再度の挿入。焼けた鉄を突っ込まれたようになって、少女の身体は引きつけをおこした。
    血があふれてふとももを伝う。
     血のせいですべりがよくなりすぎたと、男の舌打ち。
     殺さなければ殺される――
     少女は確信した。無造作に投げ出された男のナイフへそろそろと身体の角度を変えながら近づき、震える指で拾おうと試みる――
     その手を、男は床に叩きつけた。少女のほっそりした手首をぎりぎりと締め上げる、少女はもはや悲鳴をあげる体力もなくほとんど白目をむきかける――

     ――その時だった。
     ひゅんっ、と風を切る音がした。
     少女の上に乗っていた男の首が飛ぶ。正確に切断された首からは、血が噴水のように噴出していた。
     恐怖のあまり、下半身の激痛を押して男の下から這い出した彼女に手を差し伸べたのは、赤毛の青年だった。
    「トリステインの国民も落ちたものだ――この男に代わって詫びよう」
     わけがわからない。きょとんとしていると、青年は少し苦笑して、
    「おいで。君に場所をあげる。温かいスープがあり、ストーブがあり、人がある場所を用意する。本当は国民全員にそうしたいところだけど……今の僕では、まだ夢物語だからね」
     おずおずと手をさしだす少女。トリステインの家紋入りの鎧をまとった赤毛の青年は、少女の手を取って、その身体をそっと抱きかかえた。

    ****

     街のお祭りムードに拍車をかけているのが、どこからか漏れた女王の結婚の噂だった。冗談のような風説に真実味を持たせたのが、トリスタニアの大々的な整備事業だ。
     ここ最近、トリスタニアは急速にきれいになった。道のねずみや野良犬は駆除され、道路が平らにならされた。大通りでの警備も強化されたが、暴力沙汰は増える一方だ。
    物流の観点からもトリスタニアはにぎわっている。屠場には家畜が大量に連れてこられており、香辛料、塩、砂糖のたくわえが増えた。
     ドレスの新調も増えた。何十という単位でオーダーされる使用人の服から、社交用の正装まで、絹糸が足りなくなるほど作らされ、お針子が逃げ出す騒ぎだとか。

     表彰を受けた英雄や聖女の女王、ましてや巫女のことなど、もはや誰も口にしない。


     クシュリベート公爵万歳。


     卿のさわやかな笑顔のポートレイトの買い手はおもに女性で、女王のドレスにつくられた大胆なスリットをこれでもかといやらしく描いた三文絵の買い手は、男性だった。
     いつしか三文絵にはおもしろおかしい文章がつけられるようになる――
     ――トリステインの女王はロイヤルビッチ。平民の若い男が大好き。気に入った平民は自分の城に連れ帰って精を搾り取る――
     見かねたクシュリベート公爵、女王の股に鍵をかけ、首には縄をかけてならしてみせた――

     そうとも、あんな乳くさい女ぐらいに政治が務まるものか。

    *****

     下々の調査の一環として城下にいたアニエスは、その三文絵を見て卒倒しそうになった。
    「これを書いたやつは処刑だ」
     即刻情報統制をしくべく指示を飛ばしながら、はらわたの煮えくり返る思いでぐしゃっと三文絵を握り締める。絵の陛下は生き写しのように美しく、それだけにあられもない恰好がおいたわしかった。
     調べれば調べるほど、国民がこの結婚を歓迎していることが分かる。
     クシュリベート公爵も陛下も、偶像としてはこのうえもないほど若く美しい。お似合いだとささやく声はあちこちから聞こえてくる。
     戦争特需による好景気も政権への後押しにつながっている。
     家柄も年頃も、クシュリベート公爵はふさわしい相手といえた。
     それだけではない。
    「いつの間にこれほどの人気を……」
     ここ数ヶ月でその名はトリステイン中にとどろき、シンパが大勢周りをかこっている。歌劇の主役はもはや平民出の英雄・ヒリーガルではなく、彼にすりかわっている。

    ***

     眠れない一夜を過ごした。
     昨日のことを思うと、心臓がひびわれた厚い鐘のごとく、重い残響を伴って鳴った。無用の汗が手のひらをよごし、額に髪をはりつけた。
     焚きつけられた性欲が、むらむらと自分を責めさいなんでいた。
    失った膜がじくじくと痛む。
    だがそれ以上に、欲が高まっていた。
    天蓋を落としたベッドの脇には、メイドが控えているはずだった。
     とうとう、眠るときまで監視されることになった。
     寝ずの番をしているメイドに側仕えられ、自分で慰めることもかなわずに、ただただ夕べのことを思い出して胸を熱くする以外に詮方ない。
     才人の手が自分を押さえつける。その力強いこと。
     才人が自分の中をかきまわす。その快感。
     つぎつぎと昨夜の情事を思い出しては、煩悶した。

    ***

     晩餐会のさなかにも、アンリエッタは上の空だった。長いテーブルの一番上席に腰かけ、ホスト役の男性貴族にあれこれと話しかけられている自分を、どこか遠くから俯瞰しているような離人感がある。
     ワインは若く、冷たく、しびれるように新鮮だ。出てくる料理も軽く舌触りがよく、食欲のないアンリエッタのフォークも進む。
     黒すぐりのソースがかかった子牛はとくにおいしい。反対に、鶏卵のソースがかかった白身魚は少し重かった。手慰みにこまかくほぐしつつも、口に持っていく気になれない。
     食欲がないのをさりげなく見抜いたホストの貴族が、ワインを取り替えた。
    透明な赤ぶどう酒だった。混ぜ物をしたらしく、かすかに沈殿物がたまっている。
    「ショウガ入りです。身体が温まって、食欲も湧きますよ」
     ホストの貴族がにっこり笑う。
    「ありがとう、クシュリベート公爵」
     さきほどからこの若き公爵は如才ない弁舌でアンリエッタに話しかけ、楽しませ、笑わせてくれている。
     王位継承権第五位にいた彼は、世が世ならアンリエッタのいとこにあたる人間だった。
     彼の父、王弟ガインズは、クシュリベートの名と公爵の地位を授けられて、王族から籍を抜かれていた。それにつきあわされて、彼も公爵家に落ちぶれている。父亡き後、彼が正式なクシュリベート家当主だった。
     彼はこの晩餐会の主催者にして、もと王族。
     ――わたくしの、夫となるかた……
     あらためて彼を見つめる。カールのかかった赤毛。こげ茶の瞳。笑った顔が、少しだけウェールズに、かつてのアンリエッタの恋人に、似ていた。
     ――この方は、裏でロマリア教皇と通じているはず。
     あるいは彼自身でなくとも、彼の後見人が。彼は傀儡にすぎないのだから。
     傀儡とアンリエッタを結婚させることで、裏からトリステインを操ろうともくろんでいるに違いなかった。

     横目でちらりと確認すると、母マリアンヌとマザリーニ卿がそれぞれ歓待を受けながら談笑している。なにを話しているのかまでは聞き取れないが、今のところはつつがなく、『政治』が行われていることは確かだった。
     これから先、結婚に向けて、気の遠くなるようなかけひきが繰り返されるだろう。そのすべてを問題なくクリアしてはじめて、彼は認められる。
     ――頼みましたよ……アニエス……
     アンリエッタは祈りながら、顔だけはにこにこと華やかな笑みを絶やさず続けている。
     弦楽器がゆるやかな調べをうたい、同席の貴族数十名がうっとりと耳を貸す。
     行事にかこつけて開催されたアンリエッタの婚約パーティは、今まさにはじまったばかりだった。
     

    ***

     アニエスは銀の盆を片手に、ひきつった笑みを浮かべていた。髪は結い上げてかつらをつけ、ひらひらのメイド服で変装している。
    「すてき!」
    「似合いますよ、隊長!」
     きゃあきゃあわめくメイドたち。まるでお遊びのノリにひとにらみくれてやると、それぞれ盆で顔を隠したり、そそくさと裾のほつれをなおしたりして知らん顔を決め込んだ。
    「では、こちらの料理の配膳を頼みますよ」
     メガネのメイド頭(館で一番偉い)を慣れないかしずきのポーズで見送ると、音速で料理をキャスターに運び終え、集まってきたメイド達を見渡し、命令を飛ばした。
    「では各自、手はずどおりに。密書の類はすべて私に回せ!」
     率いたメイドの恰好の者たち全員が、銃士隊なのだ。

     今日の晩餐会に必要な人手を貸す、という名目で、百人のメイドを送り込んだ。
     そのうち半分がアニエス達銃士隊だった。公爵の身辺調査をするために、マザリーニ卿が無理をしてねじこんだのだった。
     もちろんメイドとしての仕事もこなしつつ、疑われないように屋敷を探っていく必要がある。
     さきほど、アニエスも、屈辱にまみれながら貴族に酒のグラスを配ってまわった。途中で尻をなでられたりしたが、黙って耐えた。
     ――あの貴族はあとで処刑だ。
     怒りをたぎらせながら、おせじにも美しいとはいえない所作でじゅうたんを歩いていく。

    「やっぱり陛下づきのメイドって美人ばっかりねー」
     一方こちらの隊員は、雑談にかこつけての情報収集中だった。
    「王宮って女ばっかりなんでしょ?」
    「そうなんだよねー。だからうらやましくってさあ。ここの若旦那、カッコいいわよねえ」
     別の親衛隊がそうだそうだと応じる。
    「そうそう! ちょっとウェールズさまに似てて!」
     メイド達はまんざらでもなさそうだ。
    「へへー。お優しいのよー、旦那様」
    「魔法もすっごく上手で、庭の水遣りとか手伝ってくださるの」
    「ここの庭園、有名よね」
    「そうなのよー。ほっとくと一日中でも土いじったりしてるの」
    「奥の『翡翠の園』には誰も寄せ付けないのよ。なんでも冷気に弱い珍しい植物をたくさん育ててらっしゃるんですって」
    「ちょっとだけ中みたことあるけど、スゴかったわよ。ジャングルみたいになってるの」
    (魔法がうまくて、水属性――と)
     こっそり胸のうちでメモをとる。

     聞き込み調査中の団体とは離れて、アニエスは公爵の書斎をそっと暴いていた。アンロック(開錠)に詳しいメイジを伴い、机のひきだしの中身をすべてさらう。
     総量はさほど多くなかった。
     書類の解読はメイジに任せ、アニエスは棚の本をかたっぱしから開いていく。
     文字がすらすら読めるわけではないが、それでも水の魔法に関する本が多いことはわかった。
     植物の図鑑のようなものも多い。色とりどりの花や草木が詳細な解説つきで書きとめられていた。
     ふと気になって文字を見比べる。
     どれもこれも、筆跡がよく似ていた。斜め上にはねあがる、独特のクセを持っている。
    「まさか、ここにある本全部が公爵の手書きなのか?」
    「かもしれませぬ」
     連れのメイジが興味深そうに言う。彼女もエプロンドレス姿で、しかもなかなか似合っていた。
    「写本、というわけでもなさそうです。すべて公爵が著したのでしょう。すばらしい質と量です。これが仕事でなければ、じっくり読ませていただきたい所」
    「後にしろ。何かわかったか?」
    「書きかけの手紙やもらった手紙などもありますが、ロマリアとの関連はなさそうですね。ロマリア宗教にかぶれている様子もありません」
    「何かないのか?」
     イライラと歩き回りながら、片端から本をあけていく。

     結局、棚を空にしたところで、それらしい手がかりは得られなかった。

     本をもとの通り並べなおしながら、ふとアニエスはつぶやいた。
    「……ん、一冊欠けてるな」
     図鑑には番号が振ってあり、15巻目が足りなかった。最初のときに気づかなかったのは、そのぶん詰めて並べられていたからだ。14巻の次にいきなり16巻が並べられていたらしい。
     前後の巻には国別の植物概要が載っている。トリステイン、ガリア、アルビオン、ゲルマニア……
    「ロマリアだけ、ない?」
    「そのようですね」
    「……探してみる必要があるな」
     うなずきあう二人。
    「ふつう、こういう場合は何が考えられる?」
    「人に貸した、あるいは別の場所に放置している」
    「……ほったらかしていることは考えにくいな」
     アニエスは机の上を見やる。きれいに整頓されており、本もサイズと色と種類できっちり分けて並べられていた。偏執的なこだわりが感じられる。
    「人に貸しているのやもしれませぬ」
    「そのようだな。となると、誰に貸したのかも探らねばなるまい」

    ****

    「証拠が――見つからない?」
     アンリエッタ女王陛下がぼうぜんとつぶやくのに、アニエスは恐縮した。
    「はっ……恐れながら、ロマリアとのつながりを示す手がかりは一切見つかりませんでした。屋敷中、調べていないところはないと自信を持っていえますが、しかしロマリア宗教の痕跡は全くありません。書記などからも怪しそうな手紙などはすべて接収したのですが、いずれもくだらないものばかりで。証拠隠滅にぬかりはない、ということでしょう。ただ、伝書鳩を飛ばす回数が異様に多い、という点には着目すべきかと。ちょうど三ヶ月ほど前から、倍々で増えております」
    「なるほど。どこかでうまく中継を取っているのかもしれませんわね」
    「本日からは追跡をいたします。指揮はお任せを」
     短くアニエスをねぎらって、アンリエッタはマザリーニに目を向ける。
    「出納簿によると、ここ三ヶ月で、遊行にかける費用がずいぶん増えておりますな。先の婚約パーティも相当出費がかさんだでしょうが、それにしても晩餐会が多い。ガリアでの兵役で消耗したところに、どこからこれほどの大金を仕入れておるのやら」
    「怪しい入金はなくて? たとえば、賄賂を受け取っている、といったような。帳簿を二重にしているかもしれませんわ」
    「調査中ですが、ただ、人件費がずいぶん安い、という点は気になりますな。もともと雇っている人数が少ないのは先日見たとおりですが、やはり三ヶ月前から急激に削られております。これだけの食料や物品で、百人からの使用人をまかなえているとは到底思えませぬ」
    「人件費――人件費、ね」
    「まだ推測ではありますが、遊行費が増えた分、ほかを少しずつ削って帳尻が合っているように見せかけているのかもしれませぬ」
     アンリエッタはしばし考え込み、
    「賄賂や裏金があるのなら、当然どこかに隠されていますわね……」
    「しかし、それらしいものは見つけられませんでした。妙なものといえば、中庭の温室ぐらいで」
     アニエスは見てきたものを説明する。
     広大な中庭の一角を区切って、ガラス張りの部屋が作ってあった。そのガラスはトリステインの技術ではちょっと作れないほどの厚さと透明度があった。中には常緑の木や草花がたくさん生えており、ほとんど緑色になっていて中を覗くことができない。
    「『翡翠の園』、ですわね。わたくしも一度だけ歓待を受けて中に入ったことがありますわ。中はじっとりと汗ばむような気温ですの。火石を使って温度を保ち、トリステインでは育たない植物を栽培しているのだとか。本当にものめずらしいものばかりで、蛇のように動く植物などもありますのよ……」
     そこまで一息にしゃべって、急に女王は黙り込んだ。
    「それはまた、珍しいですな」
     うむ、とアニエスもうなずき、それから話を戻すように、
    「中を見せてみろと言っても、今はダメだの一点張りでした」
     と報告をした。
     しかしそれも聞いていない風に、アンリエッタは、
    「……あの植物、……ああでも、記憶違いかも……もう何年も前に聞いたきりで……」
     ぶつぶつとひとりごとのようにつぶやく。
    「いかがなさいましたか」
     急に心ここにあらずといった様子で考え込む女王を見かねて、マザリーニ。
     女王は迷うような口ぶりで、
    「……あの珍しい植物は……たしかロマリアのものだと……」
    「ロマリアですと!?」
    「……そういえば」
     と、これはアニエス。
    「彼の書斎には植物図鑑が大量にありましてな。国別に分けてあったのですが、なぜかロマリアのものだけが欠けておりました」
    「……ロマリア、植物……」
     女王は考えるように口の中でぶつぶつとつぶやき、
    「……『翡翠の園』への立ち入りは可能でしょうか、マザリーニ卿」
    「そうですな。仮にも陛下の夫と目される人物。それぐらいはどうとでも理由をつけられそうですな」
    「アニエス、なくなったという植物図鑑は探し出せますか?」
    「はっ。一命に代えましても!」

    ***

     マザリーニとアニエスのいなくなった自室で、アンリエッタはそっと絹の長手袋を脱ぐ。インクで汚してしまわぬよう、生の指で羽根ペンを取る。
    「……宴をひらきましょう、クシュリベート。わたくしとあなただけの、最初で最後の、ひみつの宴を」

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    Date:2009/03/07
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    Thema:二次創作:小説
    Janre:小説・文学

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