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    アニメ・ラノベの同人小説倉庫

    □ 短編 □

    真昼姫と夜の靴 -ミミズクと夜の王-

    泣きました。
    これは感想文代わりに書いたものです。

    エロくもなければ、やまもおちもいみもありません。
    毒吐姫と星の石は未読です。矛盾してたらすみません。
    読みたいとは、思って、いる。





     それは娘の絵だった。

     干し草を思わせる細い髪の少女が、ひざをかかえて座っている。
     素足の裏は泥にまみれていた。黒く、こびりつく土を、少女は親指の腹でぬぐっている。

     もう一枚の少女も座っていた。その足には美しい靴が履かされている。
     強い強い、昼の太陽の色に爪先を包まれた少女は、くすくすと幸せそうに笑っていた。

     どんな顔料を使っているのか、その絵には不思議な光沢があり、
     まるでその少女自身が生きているかのようだった。
     
     何という名画なのだろう。何と優美で、何と繊細なのだろう。

     夜の王との文通はこれで何度目か分からない。けれども、彼女はその度に美しくなる。
     クローディアスは、小さく友人の名を呼んだ。

    「ミィ」

     たくさんのものをくれた、かけがえのない友人。樹液で固めて作った宝石のように、
    その思い出はどんどん固まって澄んでいく。

     はじめに手紙を贈ったのはクローディアスだった。
     暮らしに不自由はないか。欲しいものがあればなんでも言ってくれて構わない。
     ミミズクには文字が読めないから、夜の王に宛てて書いた。

     はじめに返ってきた絵のミミズクは、うなだれていた。
     甘いお菓子と砂糖をまぶした果物に囲まれて、それはもう悲しそうだった。

     お菓子が食べたい。食べたいようー。

     そんな我が侭を言うミミズクの声が聞こえた気がして、クローディアスもつられて笑った。
     お返しに、山ほどのご馳走を送ってあげた。
     手紙はすぐに返ってきた。山ほどの花を添えて、絵画のミミズクは、にこにこ笑っていた。

    「今度は、靴かな」

     上等の革で作ってやろう、とクローディアスは思った。明るい明るい、月と太陽の色。
     刻々と変化していく星のように、不思議な光沢があって、ミミズクの肌を引き立たせる靴だといい。
     羽のように軽くて、雨を吸った土のように柔らかいといい。
     クローディアスはにっこりした。ミミズクの喜ぶ顔を想像すると、つい笑ってしまう。

    「楽しそうですね、王子?」
    「うわあ! オリエッタ!」

     いつからいたのか。婦人は彼の机からさっと絵を拾うと、ため息をついた。

    「……どんどん美しくなるわね。この年頃の女の子は」
    「……」
    「ねえ? 王子」
    「し、知りませんよ」

     オリエッタは追求しなかった。代わりに、眉間にしわをよせる。

    「今度は靴ね。サイズは……ううん、このぐらいかしら」
    「そ、そんなことも分かるのですか」
    「分かるわよ、神殿で学んだ知識がなくても、こんなに強い魔力の気配ならね」

     オリエッタもふんわりと笑う。自分の娘同然に愛したミミズク。
     彼女のことを思うと、誰もが笑顔になってしまう。

     夜の王その人がどんな気持ちで筆を執ったのかさえ、オリエッタには手に取るように分かった。
      

    ***

     ミミズクはおそるおそる、その靴に片足をすべらせた。
     何ていう、柔らかさだろう。まるで、耕した黒土だった。

    「ひゃあー」

     ミミズクは両手をあげた。それからえへへ、と笑う。

    「あたしのサイズにぴったり! ね、なんで分かったんだろ?」

     フクロウはちらりとミミズクを見た。それだけだった。

    「ディアってさあ、どうしていつもあたしの欲しいものが分かるんだろ?」

     フクロウとディアのやりとりを、ミミズクは知らないのだった。
     フクロウも、あえて説明はしない。黙って、その手を取る。

    「フクロウはねぇ、あたしと踊るんだよ。ディアが言うには、王族は、好きな人と踊るものなんだってさ。
    これはそのための靴なんだよ。だからさ、フクロウもあたしと踊ろうよー」
    「……好きにしろ」

     フクロウが低い声で言うものだから。
     突っ立っているフクロウのまわりを、ミミズクは踊った。くるくる回り、ステップを踏んだ。

     爪先をつつんだ昼の光を、幸せの音色で打ち鳴らしながら。
     フクロウと手をつないで、朝まで踊った。

    ***

     眠る彼女の頭を撫でて、フクロウは靴の片方をそっと脱がせた。
     慎重に、ミミズクの肌には触れぬよう。柔らかい引力を持つ娘の肌に、引かれてしまわぬよう。

     それから、靴のなかに指先を入れる。
     指先に魔力の色料を滴らせて、描く。
     フクロウの入れ墨と、ミミズクの紋様をかけあわせて作ったまじない文字。

     それが、分かりにくく不器用なフクロウの、宣言だった。

     この靴の持ち主は、夜光の君が許した娘なのだ――という。

     美しい靴の裏側を自分の色で染め上げると、フクロウもまた、眠った。



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    Date:2012/07/05
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    Thema:二次創作:小説
    Janre:小説・文学

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