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    アニメ・ラノベの同人小説倉庫

    □ 魔法少女まどか☆マギカ □

    砂漠の魔女 -その性質は愛欲- (完結)

    ※触手陵辱→まどほむ。ガチ18禁です。

    要素として以下のものを含んでいます。

    厨二病、陵辱、百合。



     タイムリープとストップウォッチの魔法少女・暁美ほむらが魔女の痕跡をたどり、うらさびれた廃校の、光沢などとうに失った廊下を踏みしめて歩いていた時にはもう、累々と被害者の男女があたりに蠢いていた。

     若い女もいたし、幼い男の子もいた、とうに閉経した風体の老女もいた、巨躯の異人もいた。――絡まりあう裸体を足蹴にし、暁美ほむらは歩いていく。あさましい肉欲の宴の来賓は、みながみな目の焦点を失くし、うつろな恍惚におぼれている。

     暁美ほむらは眉ひとつ動かさない……割られ尽くした窓から窓へ、強風が吹きすさぶ。染めぬ黒髪の房が、頬に、あごに、容赦なく踊り狂うのにも構いはしなかった。したたるように黒い睫毛を伏せて、あたりを冷徹に観察する。

     魔女の結界はとうに見つけた――この教室の黒板に、呪詛めいたまだら文様が展開している。その奥に、魔女はいるのだろう。だが、この魔女は。タイムリープを重ねた平行世界の、いずれのケースにも符号しないこの有り様は、いったい。

     暁美ほむらはこの魔女を、知らなかった。
     彼女にとっては、未知のものへ飛び込んでいく蛮勇こそが最大の敵である。暁美ほむらは記憶と学習と鍛錬によってすべての魔女を退けてきた。つたない体技や、乏しい魔力を補って余りあるほど、『情報』は尊い。

     未知の魔女の巣窟へ、いざなわれるままやってきたこの行為は、蛮勇以外の何者でもない。
     それでも暁美ほむらが、山奥の廃村の、さらに廃校まで踏み入ってきたのは。

    「ほむら……ちゃ……」
     二つ結いの桃茶の髪は、片方がほどけ、片方のあちこちから、後れ毛がはみ出ていた。夢見るようなばら色の頬は、羞恥と撲たれた痕と涙と泥でけがされていた。ついぞ他人に晒したことなどないだろう、むきたての卵のような白い裸身には、ところどころ、破けた制服が散らばっていた。内出血と外出血で赤く青く変色し、無残にも膨れあがった手足。折れそうに細い腰にまきつく何者かの手。
     暁美ほむらは瞳孔の収縮しきった目を見開き、逆流しそうになる血液の脈打ちを感じながら、ほとんど悲鳴のように、叫ぶ。

    「まどか……!」

     時を止めた。もうこれ以上一秒だって鹿目まどかをこの醜悪な場に置いてはおけない。鹿目まどかを抱え、やっとのことで引きずって、隣の教室まで連れていった。

    「まどか、まどか……! ごめんなさい、まどか……!」

     かならず守ると誓ってみせた日もすでに遠い過去となりつつあるのに、またしても守れなかった。
     許しを求めて白魚のような手の甲に口づける。その手も何者かの体液で白く汚されていた。糸を引いて垂れるその汚濁に暁美ほむらは目の色を変え、亜空間から取り出したレース織りの白いハンカチでヒステリックにぬぐい清めた。ハンカチがぐしょぐしょの濡れ布になるまでこすっても、鹿目まどかの体の半分も身づくろいしてやることができない。

     あきらめて、暁美ほむらはありったけの机と椅子をかき集めた。鹿目まどかのまわりに簡易のバリケードを築く。被害者の性質からいって、この程度でも十分だろう。こんなところにひとり残していくのは気がかりだったが、今すべきことは他にある。

     この魔女を、打ち倒す。

     鹿目まどかが受けたであろう恐怖と苦痛の数千倍を味あわせ、この魔女だけはなんとしても討ち取ってみせる。たとえ再びタイムリープすることになったとしても、二度と鹿目まどかを餌食にさせはしない。最速で脅威を取り除く。そのためには情報がいる。学び、対策を練り、これを打ち倒さねばならぬ。

     暁美ほむらは、決然とヒールを踏み鳴らした。魔女の結界へ、迷いなくスタッカートを刻む。怒りと情熱のリズムが魔女の結界へ吸われていく。


     その魔女の空間には、オーガンジーと絹の天幕があちこちに張り巡らされていた。それは御伽噺にも歌われた、夜が光陰のごとく過ぎ行く、寝酒と子守唄のめくるめく褥。

     異臭が鼻をついた。おそらくは動物の体液から作られたのだろう、焚き染めた香が天幕をくぐるたびに濃密な空気を伴い、漂ってくる。可憐な花のようでもあり、それでいて本能をくすぐるフェロモンのようでもある。雄を駆り立てるための、吐き気がするような、扇情的なインセンス。

     遠くから、近くから、少女のささやき声がする――吐息を重ねた天使の合唱。ききとれない異国語の歌。愛を乞うむつごとの含み笑い。甘く高く、跳ねる少女の嬌声と笑い声。

     乱雑に天幕を引き倒し、めくりながら、奥へ、また奥へと踏み分け入る。燭台が倒れ、あっという間に天幕の薄布を火が嘗める。炎は天幕から天幕につぎつぎとリレーし、あたりを火炎の天幕に変えていく。

     蝋を乗せた真鍮の台座が、からからとかまびすしく転げる。翠緑色の錆と、こがねの光沢が入り混じった金属面が、炎の色を宿して光った。
     軽快な音を立てて暁美ほむらの足元に転がってきたそれを、彼女はヒールの先で蹴りつけた。ウェイトの軽い金属独特の、威勢のいい音が響きわたる。あちらこちらを小うるさく動き回っていた手下どもが、その音におびえ、足元で終末のように逃げ惑った。

     手下どもの姿は、いつもながら、病んだ子どもの落書きそっくりに歪な曲線を帯びていた。クレヨンで不恰好に落書きしたようなそれは、仮に犬としようか。二足で歩くぬいぐるみが、頭にターバンを巻き、腰にシャムシールをぶら下げている。足早に過ぎる暁美ほむらの関心をひこうと、前に回り、後ろへ下がって、懸命にまとわりついてくる。

     暁美ほむらの少し前を蠢いていたその手下へ、見事なツーステップで瞬時に間合いを詰めた。そして、力のかぎり蹴りあげた。後ろ足のかかとからふとももまでを美しいI字ラインにしならせたそのシュートはど真ん中に決まり、ぼふ、ぼふ、と天幕を3枚も落とした。

     暁美ほむらは苛立ちを抑えきれず、さらにいくつもの天幕を燃やし、目に入るものすべてを蹴りあげた。破壊の衝動をぶつけるべき相手が欲しかった。

     はやく。はやく目の前につれてきて。さもなければ、このまま全部火の海に変えてやる!

     息せききって駆け抜けた先に、魔女の塒があった。

     ざりっと、靴底が砂をにじった。大量の熱砂の気配が、むわんと大気にたちこめている。
     なかば朽ちかけてはいたが、それは異国の姫君のための、巨大なベッドだった。琥珀色の透かし織りが入ったリネンの海に、暗緑色の孔雀石が天蓋となく、床となく、あちらこちらに散らばっている。天井からはうす絹がオーロラのように流れ、全容をけぶる朱色の中に閉じ込めていた。

     天幕の影に寄り添うようにして、魔女はベッドの上にいた。カツラに似た、半透明のプラスチックピンクの蓬髪へ、純白のヴェールを半端に被ったそれは、密教の不出来なわら人形のようでもあった。キュビズム的に単純化された目の位置には鳶色の砂時計が横にして置いてあり、どちらの側にも時を刻まないかわりに、黒目と呼べる位置のガラスはほんのすこしだけ割れていて、そこからはらはらと一定量の砂が落ち続けていた。

     暁美ほむらは時を停めた。すべての事象が運動を止め、彼女の接触と許しなしには永遠に固定されることになった。その空間へ、暁美ほむらは挨拶がわりのRPG7を解き放つ。鉄アレイ数本分の重量が腕の筋肉をひしゃげかけたが、魔力を流したので、その痛みもすぐに消えてしまった。

     この魔女は鹿目まどかを呪った。暁美ほむらの天秤は明快だ。分銅を置く手などとうに決まっている。
     ――未来永劫、すべての世界での存在を許さない。死よりも重い錘を抱いて、砂漠の底で眠れ魔女。

     鉄の砲身を抱え、アイアン・サイトから魔女をのぞく。昔毛布のすき間から見た古い洋画の一場面を思い起こす――太って醜い娼婦に、くれてやる容赦のない暴力と言葉。"No way""I'm gonna beat you up." 呪いを撒き散らす女の末路など、暴力でねじ伏せられるものと相場は決まっている。

    「安心して。"徹底的にヤッてあげるから"」

     感慨を込めて台詞をそらんじ、暁美ほむらはトリガーを、引いた。

     暁美ほむらが時に許しを与えるよりほんの3秒早く、RPG7はいきなり暴発した。爆風と熱波を浴びながら、すぐさま砂時計を『停め』られたのは、彼女の優秀さの証左だろう。
     ――時間停止が破られた……!?
     驚愕とともに睨みつける、魔女の顔。砂時計から中身がこぼれて、きらきらと美しい流砂の文様が、シーツに花びらと砂の大河を作っている。

     毀れた砂時計のモチーフ。

     暁美ほむらの盾にも、同じものがついている。時を操る魔法の砂時計。ただしこちらは毀れていない。

     まさか、この魔女は。ロジックよりも深いところで意識の歯車がかちりと鳴る。
     ――部分的に、時間を操るというの……!?
     背筋がぞっと凍った。震えている間も与えず、空間の隙間から手下が迫ってくる。砂漠のあちこちに転がる暗緑色の孔雀石から、蛇のようにうねるツタが生え始めていた。粘性が高いエメラルドグリーンのはだえに、透明なジェリーがしたたっているそれは、なめらかに、悩ましく、のたくりながら触手を伸ばしていた。見かけは火星人の手足にそっくりなのに、単細胞動物の蠕動とはとても思えないほど繊細な動きで、障害物を避け、全方向を走査するように四方八方へ伸びていく。

     いつ時の操作に介入されるかわからない以上、銃を乱射している最中に自分の時だけ動かされる、という懸念は拭えない。
     重火器は使えない。大仰な仕掛けも作れない。一刻一秒でも早く屠りたい相手なのに、持久戦を挑まねばならぬ。暁美ほむらは唇を噛んだ。

    「そう、早いのが嫌いなのね。なら"たっぷり感じさせてあげる"」

     憎悪を込めて、吐き捨てる。

     ごく短い時間停止を駆使して、暁美ほむらはジャンプを繰り返していた。網の目のように四方へ伸縮するエメラルドグリーンのツタを、慣れた動作で見切り、かわしていく。かわせなければ、時間を止めて、せり出した孔雀石の結晶の影に隠れ、やりすごした。

     それほど動きが鋭いわけでもない。暁美ほむらは時間を稼ぎながら思案する。ならば、検証の余地はある。時間を操れるとすれば、それはどの範囲にどの程度なのか? 狙って操れるのか?

     "犬"の手下が、ぞろぞろと暁美ほむらに向かってくる。かわそうにも数が多い。

     暁美ほむらは拳銃を取り出した。このちっぽけな弾で魔女を倒すことなどできはしないが、手下を屠るのには十分だ。
     銃声が響く。続けざまに引き金をひくインパクトが手にかかる。弾丸が湯水のように使い尽くされていく。
     右手前、正面、左後ろ、右、真後ろ、右斜め後ろ。
     あっけなく"犬"の死体が積まれていった。

     15発すべてを撃ち切って、カートリッジを差し替えた。ことさら大きな音を立て、見せ付けるように古いそれを投げ捨てる。

    「ヘタクソね。そんなんじゃ乾くじゃない」

     魔女本体は、こちらには見向きもしない。ベッドの上で、目からこぼれ落ちていく砂時計を留めようとしているだけだ。砂時計に空いた穴を懸命に手で覆い隠しても、さらさらと指の間から砂が流れ落ちていく。

    「いつまでメソメソ泣いてるつもり?」

     いつしか、暁美ほむらは叫んでいた。そうでもしていないと悔しさで体中の血管がはちきれそうだった。

     ガウン、ガウン。銃声が途切れなく続き、"犬"は一匹たりとも暁美ほむらに近寄れない。暗緑色の"触手"の動きもほぼ暁美ほむらに読まれている。

    「ベッドの上がお望みなのかしら? 他の場所じゃ服も脱げない? 明かりを消してあげましょうか、臆病な子猫ちゃん?」

     あと一押し、きっかけさえあれば、すぐにでも魔女のベッドをひっくり返してやれるのに。

    「天国へイかせてあげるわ!」

     ありったけの罵声も、魔女には届かない。

     魔女は肩を落としてうつむいていた。そうとしか言いようのない動きで、顔を両手で覆っている。

    "嘆きの魔女……いいえ。魔女はそもそも、嘆きと怨嗟でできている存在だったわね"
     彼女の悲しみのもとは何だろう。ヒントはそこにある。お菓子の魔女の呪いには、地球が爆発しそうなほどの飢餓感が根源にあった。かつて見た、美樹さやかの魔女の嘆きは、永遠に報われぬ恋慕に端を発していた。ではこの魔女は? 何を恨み、何を求め欲していたのだろう?

     拳銃を撃つ。手下たちに次々と風穴を開けていく。15発を撃ち切って、時を止め、カートリッジを手早く差し替える。見渡す限りの手下たちを仕留め、体を自由にする。

     次に、魔女本体へロックオン。この火力ではいかにも貧弱で太刀打ちできそうにもないが、挑発するぐらいの役には立つだろう。当てないように、慎重に照準を合わせ、距離を詰めていく。目測で10メートルを切った。魔女は動かない。9メートルを切った。まだ動かない……

     3メートル。魔女が気まぐれに踏みつけてきただけで命が危ぶまれるほど近づいて、暁美ほむらは時を停めた。

     グレースケールのフィルターのように色あせた世界の中心で、暁美ほむらは銃把を握り締めた。ポイントする場所は砂時計。彼女流の魔法により、視力の照準のズレと構えた腕の角度が、1度以下の正確さでぴたりと合わされる。 ここに穴を穿たれれば、流れ込む空気の圧力により、瞳からこぼれる砂の量は数倍以上に増すだろう。

    「目覚めのキスでもくれてやるわ。王子様でなくて残念でしょうけど」

     その弾道を崩さぬよう、そろりとトリガーに力を込めた。雷管の爆発と、銃弾の推進力の反動がきつく腕にかえり、照準が上にはねあがりそうになる。それを魔力で押さえつけ、照準を合わせたまま、暁美ほむらは遮蔽物の後ろへとんぼを切った。

     あらかじめ決めた地点へ身を隠してから、停止を解除する、はずだった。

     暁美ほむらが油断していたなどということは、決してない。時間停止の魔術は、ただの1秒でも莫大な魔力を浪費する。秒数の計測は、身の毛もよだつ苦痛の積み重ねにより、暁美ほむらの体に染み付いている。10分の1秒ですら、暁美ほむらが数え間違うことはない。

     その緊密な連続性をすべて断ち切った、ミッシングリンクの果て。まさに暁美ほむらには"唐突"としか形容できないぐらい、突然の成り行きで、魔女の前に"犬"が立ちはだかっていた。シャムシールを片手にしたその犬は、2メートルほどの大きさで、どの手下よりも険悪な目つきをしていた。その"犬"が、魔女を狙う凶弾を切り捨てる。
     装甲を貫通する弾、のはずだった。ましてやそれを切り捨てるなど、童話や夢物語の話だった。

    "時が――停まった……!?"
     銃弾は、暁美ほむらの予測では、コンマ数秒で魔女に届くはずだった。ところが"犬"は、止めた時の中を移動したとしか思えないほどの早さで、魔女をかばっていた。
     ショックで足がもつれた。転びそうになりながら、孔雀石の隙間に身をすべりこませる。

     魔女は"犬"のほうを見た――そうとしか思えない動きで、砂時計をはりつけた目を"犬"に向けた。魔女の手が"犬"の毛皮をとらえ、いつくしむように抱き寄せる。せきとめる魔女の手がなくなり、砂時計の穴からはかつてないほど大量の砂がこぼれはじめていた。

    「それがあなたの"王子様"? 魔女と野獣なんて、絵にもならないわよ」

     皮肉をつぶやく。
     
     次の瞬間、また、時間が飛んだ。

     まったく唐突に、足元には"犬"がまとわりついていた。魔女に抱きついているものの10分の一にも満たない小さな"犬"が4匹、暁美ほむらの足を止めている。そのまわりには、新たに創造したと思しき、エメラルドグリーンの"触手"が5株、蠢いていた。すべてに的確な射撃でダメージを与えてから、離脱を試みる。

     次の瞬間、さらに時間が飛躍した。

     腕と足に冷たいものが巻きついていた。見るとそれは"触手"だった。蛇が獲物を絞め殺すときとそっくりの動きで、暁美ほむらの両手首と両足に、くるくると螺旋をえがいて這いずっていく。ずるるっ、ずるるっ、と透明なジェリーまみれになっていく感覚に、暁美ほむらは色を失うほど顔を青ざめさせた。

    「触らないで!」

     この"触手"にだけは捕らわれてはならないと、本能が告げていた。万力のように力をこめた指で手足の拘束を引きちぎり、

     さらに時間がジャンプした。

    「ひあ……っ!」

     暁美ほむらの両腕が、くん、と真上に引き上げられた。両手首を硬く戒められ、天高く吊るされる。肘から先を振るえども、むなしく宙を打つのみで、拘束を解くには至らない。じたばたともがく足のすき間へ、ぬるぅっ、と触手が這いあがる。魔法服の繊維のすき間にジェリーがべったりと浸透し、濡れそぼる感触に、暁美ほむらは戦慄した。

    「緊縛プレイ? ずいぶん趣味が悪いのね、子猫ちゃん」

     言葉の軽快さとは裏腹に、暁美ほむらのこめかみに汗が浮く。

    "まずい……捕まっていると、時間停止は使えない"

     触手の先端が、股間へ到達した。おぞましさに気が遠くなる。ぐぷ、ぐぷ、とジェリーを塗りたくりながら、触手が下着を上下する。べったりと濡れて張りつく布一枚に阻まれた触手が、暁美ほむらの入り口にもぐりこもうと暴れまわっていた。

    「触るなって言ってるでしょう!」

    「~~~っ!」
     ぐりぐりと押し付けられる触手の動きにつれて、電流のような感覚が混ざる。肉の皮に押し包まれた雌芯が甘がゆく刺激されて、足腰がおぼつかなくなった。あいかわらず詮なくバタバタと、子どものように足をもがいていたが、その動きがあからさまに鈍くなる。

    「がっつくんじゃ、ないわよ……!」

    どぅるっ、と重い水音をたて、"触手"が暁美ほむらの首筋に巻きついた。締め上げられて、息が詰まる。のどを開き、舌をだらしなく垂らして、酸素を求め、魚のようにぱくぱくと口を開閉させる。脳が苦痛とレッドアラートで占められ、無為にもがくことしかできない。ほとんど生体反射的にあがくだけの彼女の頬へ、どぅるるんっ、と、"触手"の先端が迫る。

     ひ、とのどの奥で悲鳴が爆ぜた。得体の知れないぬらぬらとしたものが顔に当たっているだけでもぞっとするのに(どれほどの細菌で汚染されているのだろう)、狂ったように頭を振り、懸命に魔法の力を集中させようとしても、"触手"はまったく外れないのだ。

     酸素不足で大きく開いた咽喉部の奥ふかくまで、"触手"はぬるりっ、と滑り込んだ。

    「~~~~ッ!!」
     なまぐさい臭気が脳天の奥まで衝撃を与えた。どろどろのゼラチン質が舌の熱で溶けたのか、正体不明の汁気が口腔をいっぱいに満たす。
    "いや、いや……何、これ……!"
     断じて飲みたくはない。唇から透明な汁がどろっ、どろぉっ、としたたり、魔法服をすらくさい汁でべたべたに汚していく。喉のさらに奥まで完全にもぐりこんだ"触手"が、暁美ほむらの舌の上で、ぐじゅっ、と勢いのいい音を立て、ピストンのように前後の動きをしていた。

     吐き出そうとしても、吐き出せない。暁美ほむらの必死の抵抗すら奪うかのように、首に絡みついた"触手"が、いっそう締まる。今度こそ致命的な窒息がやってきた。いざとなればソウルジェムとの連携を切ることで、窒息死だけは免れる。ただし酸素が通わなければ身体は徐々に痛んでいく。ことのほか脳は損傷が早く、復元には魔法力を余計に消費する。

    "時間停止への物理的な介入とこの触手。相性は最悪と言っていい……"

     後悔しても遅すぎた。頭の後ろでホールドアップされた手は、どんなにもがこうとも祈りを捧げる殉教者の形を崩せず、足を閉じようとしても左右の触手に足首を固定されてしまっている。ぶざまに割り開かれた太ももの間を這いずる"触手"の、その奥の肉の襞を執拗にこする感触に、言いようのない悪寒と、奇妙な痺れが襲ってくる。

    「ん……! ふぐぅ……!」

     右の首筋に、ちくっ、と痛みが走った。見れば、"触手"の先端が牙をむいていた。噛まれたのだ、と理解するのと同時、ずきん、と痛みが大きく脈打った。かあっと、全身が燃えるように熱くなる。戯画のような魔女の世界が、どろどろに煮込んだ鍋のように、渦を巻いて溶け崩れていく。

    「ん……んん……!」

     "触手"がじゅぽじゅぽと粘液をあわ立たせながら口の中を暴れまわっている。生暖かいジェリーも執拗に喉の奥を突くような動きもおぞましいだけだったのに、頭の芯がぐにゃりとゆがむような感覚がして、不快感がじんわりと甘いさざなみに変わっていく。ぐっしょりと濡れそぼった魔法服の下へ"触手"がもぐりこんでいくのにも、ぞくぞくと不可解なおぞ気が駆り立てられる。

    「んぶぅっ……! んんーっ……!」

     はりついた魔法服の下にくっきりと"触手"の太い幹がとぐろを巻いているのが透けて見える。"触手"は暁美ほむらの胸をほんのりとへこませながら、その頂点に群がった。"触手"の先端が何本も、汁気をしたたらせて暁美ほむらの敏感な突起を責めたてる。

    「んん~~~っ!」

     紐のように細い触手が、意外なほどの繊細さでぎゅっと暁美ほむらの胸の頂きをしめつける。甘苦い感触に暁美ほむらは陶然と目を細める。目じりに自然と涙がうかび、透明な流れが魔法服へしたたった。口の中をうごめく野太い"触手"の、唇や服をべたべたに汚すジェリーですら、今は芳醇な果汁のようにかぐわしい。思わず飲み下し、舌でたんねんに味わいたくなる衝動をこらえるので精一杯だ。

    「んっ……んんぅ……」

     花がほころぶように色づきはじめた乳房を、"触手"のぬるぬるとした扱きが襲う。うすい肉付きを谷間ができるほど締め付けて、かたくとがった先端を楽器の弦のように何度も何度もつまびき、弾く"触手"。両方の乳首をこすり、つまみ、ぐじゅぐじゅに濡らしてすりつぶす。その脳をとろかすような刺激に耐えかね、鼻から甘くくぐもった声が抜けでてしまう。

    「んーっ……ふうぅぅんっ……」

     太ももの間にもぐった触手が、下着を挟んだ向こう側の肉のひだへ、執拗に先端を擦り付けている。布ごしのはがゆい刺激と、胸から広がる快感と、舌にからみつくむせかえるような美味とで、暁美ほむらは脳のヒューズが飛びそうなほど感じさせられてしまっていた。

     一本調子に、何度も何度も、こする作業だけを執拗に行う"触手"。その執拗さに暁美ほむらの眼前が暗くなる。疼きと渇望が際限なく膨らみ、どうしようもなく心が弛緩していくのを止めることができない。平生、気を張ってとがらせた目じりに宿している意思の強さが、くにゃりと歪んで消えうせ、まだ大人にもなりきらない紫黒色の瞳に不釣合いな情欲の炎が踊りつつあった。

    「うぅっ……! うぅぐうぅぅぅっ……!」

     抵抗を示すように、右手が左手の盾を探してもがいている。ひとまとめにくくられた手首をクロスさせ、内部の亜空間へ指を伸ばす。届かない、もう少し、あとほんの少し。力まかせにぎちぎちとしならせ、"触手"を腕力だけで振り払おうとするが、今一歩のところで到達できない。

    「あぐぁぅっ……!」

     緩急のきいた"触手"の動きが、いちばん深い角度で暁美ほむらの肉豆をとらえた。たまらず眉をよせ、喉をのけぞらせて、薔薇のように真っ赤な頬にひとすじの涙を散らす。黒々とした睫毛は涙でぐしゃぐしゃに濡れ、しかし瞳の奥には官能への仄暗い悦びが光っていた。粘液でつややかに濡れひかる唇には、無防備にさらした喉の奥まで長太い"触手"を突っ込まれている。やわらかな舌の感触を味わうように、"触手"は縦横無尽に暴れ狂っていた。

    "……バカ! こんなもの、飲んだら……! 催淫作用があるかもしれないのに……!"

     "触手"から染み出すジェリーは、糖蜜のように甘く、果実のようにかぐわしい。おのれを叱りつけ、必死に吐き出そうとしても、"触手"の前後運動がそれを許さない。注射器のように、ぐじゅり、ぐじゅりと喉奥まで汁をひっきりなしに注いでくる。かろうじて気管への進入はさけているものの、残りの汁は飲み下すしかない。こくり、こくりと少しずつ"触手"の粘液が胃の腑に落ちていく。

    "甘い……熱い……おいしい……" 
     
     強い酒に焼かれているかのようだった。ひとくちごとに理性を飛ばし、平衡感覚を失わせる。暁美ほむらという人間の、強固な祈りによって構成された不屈の輪郭が、もろくも崩れ去ってていく。気持ちの悪い酩酊感に脳が攪拌されて、魔女を倒すために組み立てたフェイズも、ぞわぞわと湧き上がる嫌悪感も、なにもかもすべてが考えられなくなっていく。

     ずくん、と子宮のあたりが疼いた。胎内の欠けたものを求めるように、身体の最奥が拓かれていく。湧き上がる泉は、まぎれもなく、肉欲だった。

    「んぐうぅぅ……! ふうぅ……!」


     触手が布ごしに接吻を続けるそこに、疼痛があった。見れば触手は牙を剥き、邪魔な布を食らい尽くしていた。

     たらたらと、身体から体液が染み出していくのを感じる。砂を吐く貝のように、赤い肉の縁がくっぱりと開いて外気に晒されている。その入り口を、"触手"が丹念にすりつぶしていく。これからそこに入れるのだというように。

     同時に、他の"触手"が、臀部のほうに絡みついた。
     悲鳴は喉の奥までつっこまれた"触手"に吸い取られ、消えていった。

     自分でも触れたことがない、菊型の排泄器官に、ぬらぬらのジェリーまみれの"触手"がひんやりと触れてきた。生肌よりもよほど敏感なその襞に、そんな感覚を感じたことが、まず初めてだった。

    「ふぐーっ! うぐうぅぅ!!」

    "やめて! いやぁっ!"

     耐えがたい屈辱と羞恥で打ちのめされながら、声にならない声をあげる。ぬちゅり、と、まず極細の何かが丹念に襞を一枚一枚嘗め取っていった。じっくりと時間をかけて、ほぐしていく算段らしかった。

    "最悪、最悪、最悪だわ!"

     こんな仕打ちを、この魔女は、鹿目まどかにも与えたというのか。刺し違えてでも、絶対に討ってやる。手札の中には戦術核級の威力を誇る巨大な武器がまだいくつも残されている。ワルプルギスの夜の為に、何周もかけて集めたコレクションだが、いまこの場でくれてやってもいいと思うほど、暁美ほむらは沸騰していた。

     ぬらついた繊細な紐による愛撫が暁美ほむらの全身をなぶっている。
     再三与えられる刺激に、とうとう、ひくりっ……と、菊の座が痙攣するのを感じた。戦略を組み立てようと集中させた暁美ほむらの思考が、一瞬で羞恥で上塗りされる。

    "やめて……!"

     こんなにも真剣に祈っているのに、自分の意思を、身体が裏切っていく。

     ぬちゅり……と、ごく細い異物が暁美ほむらの胎内にもぐりこんだ。びくん! と身体が異物感で痙攣する。虫が這いずり回っているのかと思うほど、たまらなく気持ち悪いのに、身体がその刺激をもとめて、うれしげに飲み干していく。

     じゅわっ……と、何かを入れられた。暁美ほむらの口腔内に与えたのと同種の粘液らしかった。とたん、身体が燃えるように熱くなり、慕情にも似た恍惚感がぞくぞくと身体を駆け抜ける。

     まるでいとしい人の愛撫のように、何本もの"触手"が暁美ほむらの心にもぐりこんでいった。

     ぶしゅっ……と、何本もの触手が蠢くその穴から、粘液がしたたる。暁美ほむらの汚物とまじった薄茶色の汚い汁がびちゃびちゃと垂れ流されていく。暁美ほむらはそれを、弛緩した心でぼんやりと眺めていた。着々と整えられていく直腸内に、ずぬり、とひときわ大きな"触手"が頭をもぐりこませる。

    「ふぐうぅ! ううぅぅ……!」

    "うそ……っ! はいっ、て、く……!"

     こぶのついた大きな"触手"が、ぐじゅぐじゅの胎内に、ぬるりと飲み込まれていくのを、暁美ほむらは信じられない気持ちでぼうぜんと眺めていた。

     ぐじゅっ……ぐじゅっ……

     "触手"が前後に蹂躙を加えていく。気持ちの悪い快感、そうとしか形容できないものが体中に走る。そんなものを自分の身体が受け入れられるとは思わなかった。

     暁美ほむらは少しずつ、抵抗を失っていった。

     じゅっ、じゅくっ、じゅるっ……
     
     激しい怒りはバケツで水をかぶせたように消えうせ、かわりにびしょ濡れの敗北感がやってきた。胸にべったりと残る後悔と自己嫌悪の念だけが、悪い酒のようにじわじわと胸の奥を侵食していく。

    "いつまで経ってもまどか一人守れない、私はなんて役立たずなの"

    "ごめんなさい、あんなにもきれいだった肌に泥をつけてしまった"

    "私のしてきたことに、意味なんてあったの? この身体を守ったところで、何が残るの?"

     深海のような心裡のなかで、ただひとつ確かなことがあった。
     草の化け物のような"手下"から与えられるその刺激は、天上のもののようにうましく、かぐわしかった。

     それは抗いきれない睡魔のようだった。全身を蝕み、気づいたときには、暁美ほむらはこじあけられた理性の奥のものを吸い出されないように、必死でふたを閉じるしかなくなっていた。

     じゅく、と、下腹部の前方に変化があった。むき出しにされたところへひやりと冷たい風を感じる。ウォームアップが済んであたたかく濡れそぼったところへ、触手の牙がかぶりついた。鋭い痛みにいや増して、冷たい麻酔のようなものが体内に流し込まれるのを感じる。その冷感は一瞬で去り、続けて燃えるように熱くなった。

    「ふっ……ぐ、うぅぅっ……!」

     ひたり、と触手の口が暁美ほむらの入り口に触れ合わされる。その感触に、背中の毛という毛が逆立つのすら感じる。
     そして触手は処女の狭い肉襞を無理にくぐろうと、頭を埋め、体を左右にのたのたと振りはじめた。

    「う、い、うあぁぁっ!」

     それは今までに経験したどの痛みとも違っていた。傷を負った内臓にねじり込まれた佐倉杏子の長槍ですら、これより痛みは易しかった。必死にソウルジェムを操り、肉体の苦痛をやわらげようとする。それでも止まない痛みの正体に、暁美ほむらは唐突に気がついた。

     痛んでいるのは、身体ではない。戦い漬けの日々のなかで、少しでも残そうとしてきた人間らしさを徹底的に踏みつけにされ、大事にしていた友人を汚されて、ただでさえ半分以下に折れてしまった心の、残りの部分が砕けた痛みだった。

     暁美ほむらは眼前になみだが膨れて、なにも見えなくなるのを感じた。

    「う、う、ううぅぅっ……!」

     ぐちゅり、ぐちゅり、と、動物的な運動がはじまる。熱をもった身体に、欲しくてたまらなかった疼きに、ダイレクトな快感が送り込まれてくる。犬のようにはいつくばった口に流し込まれた極上の美味は、身体を素直に喜ばせた。その分だけ、暁美ほむらの心はどこまでも深く沈んでいった。

    「うう、うぅぅっ……! っふ、うぅぅ……!」

     内壁を擦られる感覚があった。繊細な入り口を潤滑のジェリーがぐずぐずとねばっこく愛撫していく。体内のスイッチが強引に切り替えられて、全身の毛穴と性感のチャンネルがむりやり開かされていく。違和感が遠のいて、ひどく粘り気のある愛欲に脳がどろどろにとろかされていく。

    「うううぅぅぅ……!」

     暁美ほむらは泣いていた。無力だった頃のように、神を呪って泣いていた。おのれの生まれに、役に立たないからだに、けれども持たされた明晰な頭脳をもって、ただただ嘆いた。口をきけない家畜に人の頭脳がおさまっていたとしたら、きっと家畜もおなじように泣いただろう。誰にも届かぬ苦しみを抱え、手立てもなく、ただ無為に暴力を受け入れるだけの、屈辱にまみれた毎日をまぬがれるためには、いっそ死ぬか、何も感じない家畜になるより他はない。

    「う、うぅぅっ……! は、あぁぁん……!」

     暁美ほむらは雌犬のように喘いだ。触手の動きはこのうえもなく気持ちよく、瞳の奥で火花が散った。ふわふわと夢のように頼りない現実感の中で、その快感だけが鮮烈だった。かわいた心を潤すように、あぶった肉から旨味がしたたるように、脳の基幹を侵食していく。

    「あぁ……っ! うっ、うっ、ふ、あぁ、ん、んん……!」

     腰から下が快感一色に染まり、血液も神経も意識もそこだけに集まってしまったかのように、強烈な快楽がからだを焼いた。

    「い、あぁ、はぁ、うぅぅっ……うぐぅっ……!」

     快感の波がひどく高まり、頭の中を白い光が爆ぜた。びくんびくん、と腰に熱い棒を差し込まれたように身体がけいれんし、圧倒的な多幸感が脳いっぱいに満ちた。

     触手が身体を絡めとっていく。その様子をスクリーン越しに見やるように、無感動に眺めていた。触手が魔法少女としての衣服をひきちぎる。胸から腰までが一気に裂け、その下でわきわきとうごめき、絶えず乳房を陵辱する触手と、暁美ほむらのしろくなだらかな胴体があらわになった。

     足あともなにもない雪原のようなおなかと、なだらかな丘のような胸と、ほそくくねる腰とが、快感のためか、小刻みに震えていた。その下で、たっぷりと濡れた陰部が赤黒い中身をわずかにめくれあがらせ、触手のはげしい出入りを受け入れている。

    「……もう、やだぁ……はぁっ、はぁっ、あっ、うぅっ! ぐぅぅっ!」

     白い体液がこまかな泡をふきあげながら、触手に伝い流れていく。ぐちゅり、ぐじゅりと威勢のいい音が何度も何度も規則的に立ち上がる。

    「~~~~ぁあっ……!」

     腰から下の力が抜けた。頭がガンガンするような激しい苦痛と、それを上回るような強烈な快感がふくざつに織り交ざって脳をゆすぶる。分泌された麻薬に身体が侵され、快楽のパルスがはげしく脳にひらめいていく。

    "……なに……これ……気持ち……よす……ぎて……っ"

     抗えない。暁美ほむらにとって、もたらされるものだけがすべてだった。

    「ひぃ……ぃあっ……ぅん……あ、あ、あぁーっ……」

     惚けたような喘ぎがひとりでに洩れていく。思考力が低下したなかで、快感のボルテージだけがぎらつくように、高い。

    「ま、またイッちゃ……はぁぅ……っ、あっ、ああっ、ぃ……くうぅぅ……っ!!」

     腿が、腰が、胴体が、たがの外れたおもちゃのようにびくびくと痙攣し、やがて動かなくなっていく。達したことで、身体から力が抜け、思考が深い闇に沈んでいった。
     
    『――むらちゃん』

     どこか遠いところから、天使の囁きが聞こえる。しゃらしゃらと鈴のような楽の音に乗せて、むつごとのような媚を含んで。いとしい人の安らぎを運んでくるような、騙しの天使の声音がする。

    『ほむらちゃん』

     ああ、まどか、あなたなの。胸を刺すような郷愁とともに、気高い純白の法衣を見つめ返す。フリルとドロワーズに飾られた華奢な足をしゃんと立たせて、すべてを許すような笑みを浮かべて。やさしくてかわいい、わたしのあなた。

    『泣いているの?』

     ごめんなさい、まどか。私は約束を守れなかった。きっともう、この先もずっと守ることなんてできないわ。

    『大丈夫だよ』

     どうして許すの。どうしてあなたはいつもそうなの。怒って、どうして約束を守らないのって、叱ってちょうだい。

    『だって、知っているんだもん』

     ああ、これは、本当のことなのかしら? だってあたりが白すぎて、まどかの顔がよく見えないの。いたずらげに笑ったその口元も、かがんだ腰元のスカートも、私に差し出した上品な手袋も、とてもきれいなのに。あなたの顔だけが見えないの。

    『ほむらちゃんはこんなことで負けたりしない、って』

     暁美ほむらは、女神の手を取った。
     
    ***

    幻はアイスクリームのように溶けて消えた。身体をロープのように固定した触手が7本、おかしな形で宙吊りにされたからだが、好き勝手に陵辱されている。ぐずぐずにされた足の間に三本の細い触手が絡まりあいながら出入りしている。

    「んんっ……!」

     とたん、襲ってきた快楽に体がかあっと燃えた。口いっぱいにほお張らされた太い触手が断続的に甘い蜜を送ってきていて、舌の上でゆっくりととけていく。

    "わたしは、負けない――"

     彼女のために闘い続けると決めた。ここは迷路の袋小路。進む道を見失ったわけじゃない。来た道を戻って、違う分岐を探すだけ。いつもと同じ、やり直しのきく、戦略的な敗北。
     こんなところで、ソウルジェムをにごらせている場合ではなかった。

    "さあ、さっさとやっつけるわよ"

     暁美ほむらは時を止めた。ここまで乱発したのは初めてだったが、ほかに有効な手段がない。ちらりと視線を落とした手の甲で、魔法力の残量を示すように、ソウルジェムが鈍い輝きを放っていた。
     
     モノクロームの世界で、自分と"触手"だけが色つきの活動を許されている。口腔内の"触手"を噛みちぎり、ぶっ、と吐き出した。激しく噎せながら、アサルトライフル付属のナイフで、"触手"をまとめて切り落とす。

    相当の消耗を強いられたが、ただ黙ってやられていたわけではない。武器を持ち替え、手製の時限爆弾を握り締める。
    "見えたわ、この魔女の能力"

     この魔女は時を操っているのではない。その証拠に、と暁美ほむらは手持ちの腕時計を見る。最高級のクォーツ腕時計は、暁美ほむらが突入前に確認した時間までは1秒の狂いもなく合っていた。
     ところが今は、彼女が魔法力でカウントしてきた時間よりも『20秒進んでいる』。暁美ほむらがカウントしそこねた間も、世界の時は進んでいたのだ。

     この魔女は、暁美ほむらの『体感時間』を止めさせたにすぎない。本当に時を止めていたのなら、腕時計の針も相応に止まっているはずなのだ。

     そうと分かれば対処のしようもある。時限爆弾であれば、暁美ほむらが十分距離を取ったあとで爆破することができる。体感時間を止められていたとしても、その間スイッチが押されなければ、不慮の爆破に巻き込まれることもない。

     暁美ほむらは魔女まで一気に距離を詰めた。さっきは5メートルの距離までは肉薄できた。そこから投擲し、爆発の有効範囲から離れ、それからスイッチを押す。手製の爆弾だからこそ、火薬の量は熟知している。手下も含めて殺しつくせるだろう。遠隔操作の爆弾は即製での製作が困難であることから、暁美ほむらにとってはこれも『切り札』だった。

    「勿体ないけれど、進呈するわ。恥ずかしがりやのお姫様」

     完璧に馬鹿にした態度で、うやうやしく、魔女のベッドへそれを置く。

     "犬"がこちらに迫ってきた。猛獣の筋力で、暁美ほむらに剣を振りおろす。それを銃剣でからくも受け止めた。びりびりと腕がしびれるような手ごたえに、暁美ほむらはたまらず時を止める。

     時が跳んだ。

     気づけば、暁美ほむらは"犬"の刺突の寸前だった。時を止めるより早く、暁美ほむらの体感時間を止められていたらしい。スピードの乗ったその剣に刺し貫かれる手前で止めることができたのは、本当に運がよかった。

     距離をとる。魔力をフルに駆使し、はじめに来た道を戻る。天幕がはりめぐらされた細い道を。

    「サービスしすぎたわね。受け取りなさい、これがあなたの、運命<まつろ>よ」

     暁美ほむらは、万感の思いを込めて、時制爆弾のスイッチを押した。

     轟音がとどろき、魔女結界の中心から、地響きさえ伴って、砂の津波が押し寄せてくる。
     その砂に足をとられ、転んだ上に、大量の土砂がふりかかった。


    ***

    「――さん?」

     時間が飛んだ。

     意識の覚醒とともに、周囲の情報が視界いっぱいに入ってくる。ガラス張りの教室、文字で埋め尽くされた近代的な黒板、整然と腰かけるクラスメイト。自分の手元を見る――すみれ色の魔法服ではなく、学校の制服を着ていた。

    「暁美さん?」
    「は――はい」

     冷や汗がこめかみを伝う。ここはどこだろう――魔女は、手下は? 危機感でとがった神経には、先生の腹立たしそうな声も、遠い夢の中の出来事のようだ。

    「……っ!」

     身体が熱い。はじめ、暁美ほむらは自分が熱を出しているのかと思った。すぐに違うと気づかされたのは、こらえがたいうずきがおなかの奥から沸いてきたからだった。

    「具合でも悪いのか?」
    「いえ……」
    「顔が真っ青じゃないか」

     魔女の毒にやられました、とはとても言えなかった。

    「おい、誰か、保健委員は?」
    「わたしです! ほむらちゃん、すごい汗だよ! 大丈夫!?」
    「だい……じょうぶ」

     鹿目まどかの小さな手が差し伸べられる。暁美ほむらを支えようと、肩を抱き、腰に手をまわす。
     ――ずきん、と身体が反応した。

    「くぁっ……!」

     暁美ほむらはくずおれそうになる身体に鞭打ち、それでもなんとか立ち上がった。

    「ひとりで……立てるわ……」

     鹿目まどかに触れられるのはまずいと、本能が告げていた。

    ***

    昼下がりの保健室には、出張で教諭がいなかった。
     保健委員の鹿目まどかがてきぱきと暁美ほむらの熱を測り、37度3分を計測。

    「すこーしだけ、高めかな? 5分まであったら、下校できるんだけど」

     鹿目まどかが、ちらちらと気遣わしげにこちらを見てくる。

    「少し眠りたいから、ベッドを借りるわ。あなたはもう教室に戻っていて」

     そっけない返事で視線ごと遮断し、暁美ほむらはシーツの隙間に収まった。ふつう、こういうときは仮病の生徒が何人かいるものなのだが、今日に限っては誰もいない。

     背中を向けて、窓を見ながら、眠ってしまおうと思った。
     鹿目まどかは、しばらく無言で立ち止まっていた。戸惑うようにその足音が、保健室の入り口まで遠ざかり――やがて、なにかを決したように、またこちらへ引き返してきた。

     不審に思い、目をあげると、鹿目まどかは暁美ほむらの寝台のまわりのカーテンをじゃじゃっと勢いよく締め切っていた。

     後ろ手にカーテンをすべて閉め切ってしまうと、鹿目まどかは暁美ほむらを見下ろして、言った。
     日光をさえぎって、影の落ちる鹿目まどかの瞳は暗く、よく見えない。

    「ほむらちゃん、昨日、風見野のはばたき山にいた?」

     どきん、と心臓が波打った。それは魔女にかどわかされた鹿目まどかを発見した場所だった。

    「……わたしね、夢かもしれないって思ったんだよ。ほむらちゃんは黒いリボンタイとすみれ色のスカートをはいていて……大きな銃を持っていた」

    「夢、でしょう。なんのことだか分からないわ」

    「絶対、ちがうよ。すごく痛くて苦しくて、……あんなこと、忘れたり間違えたりするわけないもん」

     鹿目まどかにしては、強気に言い切った。

    「ほむらちゃん、本当のことを教えて。あのとき、ほむらちゃんが助けてくれたんでしょう?」

    "助けた? ……違うわ。私は、間に合わなかったのよ"
     痛い思いをさせたのも、苦しい思いをさせたのも、暁美ほむらのせいだと感じていた。でも、それを謝ることもできなかった。言えばますますまどかを混乱させるだけだから。

    「あなたには関係のないことだわ」

    「嘘ついたってだめだよ! ほむらちゃん、本当は心臓なんて痛くないんだよね?
     だってほむらちゃん、さっきからずっとおなかばっかり押さえてる!」

     暁美ほむらは思わず手を離した。植えつけられた欲望が、おなかのあたりでじくじくととぐろを巻いていた。性への渇望が今どのような仕組みで呪いとして刻み付けられているのかは知らないが、対象がはっきりと鹿目まどかに向けられていることは、感じていた。

    "気づかないふりをしてくれればいいのに! どうしてあなたは……!"

    「気のせいよ。心臓の病だからって心臓が痛くなるとは限らないわ。腹痛を起こすこともある」

    「わたしも、あの変なのにつかまって、すごく苦しかったから、わかるよ。
     ほむらちゃん、すごく身体が熱いんでしょう?」

     ひた、と頬に手を当てられた。鹿目まどかの使用するハンドクリームなのか、桃のような甘い香りがふわりと漂った。

    「隠さないで。ちゃんと、ぜんぶ、教えて……?」

    "教えられるものですか……!"

     手首をつかまえて、寝台の上に引き倒して、パーティションのカーテンを閉め切って。
     色なしのリップクリームでぷっくりと潤っている唇から、甘い吐息がこぼれてくるのを吸い上げて。

     本人を前にして、劣情を抱いているなどと、どうして言えるだろう。
     きっと鹿目まどかはわかっていないのだ。自分の発言が、暁美ほむらにとってはめまいのするような誘惑であることなど。

    「……しつこいわね。いいと言っているのよ」

     鹿目まどかを突き放すための言葉であるはずなのに、なぜだか言った自分が傷ついた。するどい痛みが胸に走る。

    "ちがう……私は本当は、こんな冷たい言葉を浴びせたいんじゃない。どうかわかって。嫌わないで。今はそっとしておいて"

     とりすがって、そう懇願したくなった。でも我慢した。
     彼女にとっての暁美ほむらは、出会ってから間もない転校生。ただそれだけの存在。
     勘違いすべきじゃない、ここは冷静に距離を保たないと。

     自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、胸が締め付けられる。

    "……あなたの、為なのよ。こんな風に突き放すのも"

    「ほむらちゃん……首の、このアザ、なに?」

     鹿目まどかは、暁美ほむらの長い髪をかきわけて、うなじをなぞった。ちいさな丸い桜色の爪が、暁美ほむらの首をすべって、背中のほうまで降りていく。

    「……っ」

     息をつめて感じる暁美ほむらに、鹿目まどかは真剣そのものの顔つきで、

    「わたし、知ってるよ。これと同じものが、昨日のわたしにもあった。でも、ほむらちゃんが取ってくれた。
    ……こんな風に」

     鹿目まどかは、暁美ほむらの首筋に、くちづけた。

    ***

    暁美ほむらは恐慌をきたしはじめていた。鹿目まどかのやわらかい髪が頬をくすぐり、熟した桃の香りが陶然と脳をしびれさせる。そして首筋に、鹿目まどかのあまい吐息がふりかかった。

    「んっ……」

     メレンゲよりもやわらかい、鹿目まどかのくちびる。そんなものが、惜しげもなく暁美ほむらの冷や汗がにじむ首筋に与えられていた。

    「……きゃ……!?」

     いったい、時間が飛んでいた間に何があったと言うのだろう。なぜ彼女が、魔女のくちづけを唇で清めているのだろう。
     こわばっていたからだの力をほぐすような、あまいあまい鹿目まどかのくちづけが、ぴちゃり、と舌をはわす動きに変わる。

    「……ぅあっ……!」

     じゅくじゅくと、身体の奥から膿が出るように、赤黒い欲望がかま首をもたげた。どこでもいい、鹿目まどかのからだの、やわらかいところをあばいて味わいたい。さわりたい、抱きしめたい、いつくしみたい。
     脳を焼くこのキツい渇きを、鹿目まどかで満たしたい。

     それは心の一番奥にしまわれた、ぜったいに知られたくない感情の函だった。

     ……ぴちゃり……ぴちゃ……ちゅぅっ……くちゅっ……

    「ん……ん……あ……」

     鹿目まどかの舌はベルベットのようになめらかで、あたたかくて、気持ちがよかった。ずっと味わっていたかった。
     身を引き裂かれるような思いで、暁美ほむらは身体を動かした。

    「……やめて!」

     暁美ほむらは拒絶の意思を瞳にやどして、首元を手でかばい、鹿目まどかを押しのけた。
     子犬のように無垢な瞳に、傷ついたような色をうかべて、鹿目まどかがこちらを見返していた。

     罪悪感で、こころがつぶれそうだった。

    "おねがい、もうそんな目でわたしを見ないで。どうか知らないでいて。わたしのなかの、汚いところ"

    「……だ、だめよ……それに触れてはだめ……」

     なみだをこらえながら、懸命に言う。知られては、きっと嫌われてしまう。大事なともだちに、そんなものを刃物のように向ける自分がいやで、情けなくて、つらかった。

    「だいじょうぶ……だいじょうぶだよ、ほむらちゃん」

     鹿目まどかは暁美ほむらの肩に頭をあずけて、あやすように言う。

    「……わたし、ほむらちゃんがどんな風になっちゃっても、嫌いになったりなんかしないから。
    だからもう、抱え込まなくていいんだよ? わたしにだけは、ぜんぶ、見せて?
    ほむらちゃんのこと、なぁんでも、受け止めてあげるから」

    "どうして……どうしてあなたは"

     いちばん欲しいことばをくれるのだろう。

    「……あーぁ……もう、ほむらちゃんって、泣き虫さんだよね。昨日も、わんわん泣いちゃってさ。
    でもさ、美人さんだからかな? すっごくきれいで……なんだか、どきどきしちゃった」

    「……まどかぁっ……!」

     泣きながらしがみつく、自分より図体のおおきい暁美ほむらに引き倒されて、鹿目まどかがよろめいた。

    「……ぅわわっ……!」

     鹿目まどかのちいさな身体をちからいっぱい抱きしめて、暁美ほむらはなみだの味がするキスを、した。

    ***

    かるく、触れるだけのキスだった。のしかかったままの鹿目まどかがそっと肩だけを起こす。わずかに上体だけを持ち上げて暁美ほむらにおおいかぶさる鹿目まどかが、さらりと髪を傾けて、はにかむように笑った。

    「えへへ……ほむらちゃん、すっごくいい匂いがする」
    「ほ、本当かしら?」

     かあっと、気恥ずかしさで頬が燃えるのを感じた。キスをする予定なんてなく、おくちのなかのコンディションに気を配れる余裕はなかった。清めていない自分の身体が恥ずかしくて、おもわず口を手で押さえていると、その手をやさしく退けられた。

     鹿目まどかの、愛らしい瞳がすぐ近くで自分を見ている。すぅっとまぶたが降り……
     またキスをされた。
     恥ずかしさと、受け入れてもらえたうれしさと、緊張がからまりあって、暁美ほむらの胸を打つ。

     触れるだけのキスを繰り返し、目をあけた鹿目まどかの頬は、りんごのように赤くなっていた。

    「髪も肌も、さらさらの、とぅるっとぅるだよ。……ほむらちゃんて、どんなシャンプーつかってるの?」
    「え……と……ふつうのよ……?」

     ろくに学校に通っていなかった暁美ほむらには、この手のガールズトークがうまくない。

    「手も脚もこーんなに長くて……いいなあ……私も、ほむらちゃんみたいになりたかったなあ」

     小学校のときからいまでも捨てれてないお洋服いっぱいあるんだもん、サイズが変わらないからさあ、と、とりとめもなく続く鹿目まどかのおしゃべりを、暁美ほむらは頬に触れて、止めさせた。

    「あなたの方が、魅力的だわ」
    「えっ……」

     今度は鹿目まどかが言葉に困る番だった。

    「いいよぉ、そんな、お世辞とか……うう、ちょっと傷つくし。私、ほむらちゃんとは比べられたくない、かも」
    「まさか。あなたは知らないのね。……自分がどんなにかわいいのか」

    (私が、どれほどあなたを愛しているか)
     そう告げる勇気がなくて、好きだという言葉をかわいいという表現にすりかえる。

    「そんなこと初めて言われた……もう、やめてよ、ほむらちゃんは言われ慣れてるかもしれないけど、私いますっごくどきどきしてるんだからね!」

     甘えるように怒る、そのすねた唇の角度のかわいらしさを、本当に鹿目まどかは知らないのだろう。

    「そう。なら誤解ね。……私だって、緊張で心臓が破れそうよ」
    「ほむらちゃん……」

     心臓に重ねあわされた手がちいさくて、いとおしい。ちんまりした指先にそっとおのれの手を重ね合わせ、暁美ほむらはそのぬくもりを味わった。

    「……わかるかしら? こんなに早いのよ」
    「うん……」

     夢見るようにそっとまぶたを下ろして、鹿目まどかは暁美ほむらの鼓動に神経を研ぎ澄ます。ほっぺたをぺたんと制服の胸に置かれてしまい、暁美ほむらはじんわりと甘い幸福を覚えた。ああもう、なんてかわいいの。

     さわさわどくどくと、暁美ほむらの耳元で血が騒ぐのが聞こえる。ときめきとめまいで、どうにかなってしまいそうだった。
     鹿目まどかの手がしゅるしゅるりと、暁美ほむらの制服のリボンを抜き取った。はだける胸元へ、鹿目まどかが子犬のように鼻先を押し付ける。

     ぺろり……と鎖骨を嘗めあげられた。

    「ふ、ぅ……」

     たったそれだけの動作で、腰の奥が激しく疼く。目の前が真っ白になるほどの強い衝動が声を漏れさせ、ベッドに体を縛り付ける。

     ……ちゅ……ちゅく……ちゅうっ……

     鹿目まどかの唇が鎖骨をおりて、なだらかな胸へ這っていく。唾液の光る痕を残しながら、ぷつりぷつりと開かれるブラウスのボタンさえもどかしいように、頂きをめざしていく。

    「ん……ん……うぅ……」

     痩せ気味で、浮いたブラのカップの隙間に、鹿目まどかの舌が届いた。とがりきった蕾を、糖蜜のように甘く吸い上げる。

     ……ちゅうっ……ちゅっ……くちゅっ……

    「はぁっ……あっ……!」

     暁美ほむらの声が跳ねた。しぜんとそうなった。とろけきった声色に、自分で自分の耳をふさいでしまいたくなった。

    「ほむらちゃん……きれい……」

     きれいなものか。鼻息も荒く、髪をかきむしって体をがくがくと痙攣させる、あられもなく感じた女の姿は、醜いだけだ。ぐらぐらと定まらない思考のなかで、暁美ほむらはぼんやりとそう思った。

    「……ふふ……肌がすっかりピンク色だね……」

     暁美ほむらの恍惚に当てられたのか、鹿目まどかも瞳をうるませはじめている。鹿目まどかの、野に咲く花のようなかれんな瞳に、しっとりと夜露が乗せられていた。

     ……ちゅうっ……くちゅ……ちゅっ……

     砂糖菓子のような唇が、暁美ほむらの胸の飾りをしっとりと味わいつくしていく。
     同時に、鹿目まどかの指がスカートのホックにかかった。ぱさり、とアサガオの花状の一端が切り開かれる。

    「……ほむらちゃん、これ……」
    「……やぁっ……!」

     鹿目まどかが何かを指差すが、暁美ほむらはとてもそちらを見る勇気がない。自分の身体がどうなってしまっているのかは、感覚でなんとなく把握していた。
     鹿目まどかが酔いをにじませたまなざしで暁美ほむらの身体を見つめる。ずり落ちたスカートのすそへ、その指をもぐりこませた。
     タイツにつつまれた下腹部に、ほそい指が伝っていく。へその下、茂み、さらにその奥。
     必死にスカートをかき集め、はばもうとする暁美ほむらの手を握り、

    「……いいんだよ、ほむらちゃん……私のこと、使って? いまの私はね、ほむらちゃんの渇きを満たすためにいるんだよ。私は、ほむらちゃんの、道具なの」

     鹿目まどかのあどけない声が、とんでもないことを粛々と言い聞かせてくる。

    「だから、ぜんぶ見せて」

    ***

     ぐいっと、タイツの生地が伸びる。さらけ出された割れ目から濃いにおいがしているのを、暁美ほむら自身の鼻でもかぎわけられた。そこにぐちゅり、と指が繋がれた。

     ……ちゅく、ちゅく……ぬちゅ、ぬぐ、ぬるっ……

    「ひぃ……あっ……あァ……」

     一番欲しかったところに欲しかった刺激が加わった。ぞくぞくぞく、とふるえが体いっぱいに走る。
     暁美ほむらの瞳にうつる鹿目まどかの顔立ちさえ、真ん中にスプーンをつきたてたカフェラテのアートのようにぐんにゃりとゆがんでいく。
     鹿目まどかがスプーンをはげしく掻き混ぜていく。暁美ほむらは前後の感覚もわからなくなっていく。

     ……ぐちゅ、ちゅく、ちゅくちゅく、ちゅくちゅく、ぐちゅぐちゅぐちゅっ……

    「あっ……はぁっ……ま、どかぁっ……!」

     かすれて声もうまく出ない。いまにも泣きそうな呼び声に応えて、鹿目まどかはそっと暁美ほむらにキスを落とす。
     もぎたてのフルーティな香りは、まるで桃だ。あまい香りと爪先までしびれさせる刺激にどろどろに溶かされて、暁美ほむらはがくがくと腰をつきだしてしまう。

     あっという間だった。脳髄が真っ白に染まり、焼き尽くされた。たかぶったエネルギーが一気に解放されて、この世のものとも思えない快楽を撒き散らして消えていく。

     しばらく気絶していたかもしれない。

     重たい頭をふりながら暁美ほむらが薄目をあけると、鹿目まどかがストリップをしているところだった。上着と靴下だけを残して、子どもっぽさの残るふとももやお尻を昼の外気にさらけだす。
     カーテンをしめきっているとはいえ、室内はまばゆいばかりの光につつまれている。明るいひかりの下で見る、着崩した制服の鹿目まどかは、あどけなくも美しい。太ももや頬に照り映える真っ白いハイライトに、かすかな産毛が浮いていた。

    「あっ……」

     暁美ほむらの視線に気づいた鹿目まどかが、みるみる真っ赤になって体を隠す。

    「だ、だめ! あんまり見ちゃだめだよ!」
    「どうして? ……美しいわ、まどか」
    「う……!? ほ、ほむらちゃん、ひどい!」

     暁美ほむらなりに鹿目まどかの心を打とうとしたくさい台詞は、盛大に空振った。
     鹿目まどかは自分の身体に少なからぬコンプレックスを抱いているらしかった。逃げるようにふとんをかぶり、暁美ほむらのウエストに手を回す。

    「自分はこーんなにきれいだからって、だからって、そんなに上から言うかな!?」

     信じられない、とぶつくさ言いながら、鹿目まどかの手が暁美ほむらの上をすべる。

    「ウエストもこーんなに細くって、手も足も大人みたいにすらっと長くって、むだなお肉なんかぜんぜんなくって……モデルさんみたい。すっごくうらやましい」
    「……でも、あまり女らしくないし……」
    「お人形さんみたいな顔して、よく言うよね!」
    「……ご、ごめんなさい」

     勢いに押されて謝ってしまったものの、鹿目まどかが何をそんなに羨んでいるのか、暁美ほむらにはぴんとこない。こんな棒切れのような身体よりも、鹿目まどかのほうがよほど魅力的だと、素直にそう思うのだ。
     暁美ほむらは、鹿目まどかのふわふわの太ももに手を触れた。ぴくり、と鹿目まどかが反応するのが分かった。
     やわらかく降り積もった雪のように、鹿目まどかの太ももは暁美ほむらの手のとおりに形を変えた。うにうにと細い指を器用にしならせ、隠微な調子でもみしだく。

    「ほ、むらちゃ……それ、えっちだよぉ……」
    「まどかがいけないのよ。まどかがこんなにやらしい身体をしているから……」
    「や、やらしくなんかないも……んんっ……」

     下手をすれば小学生のようにも見える鹿目まどかの瞳がとろりと濁る。熟れきった桃の、甘い蜜の色がたっぷりと汁気をたたえて揺れている。
     むきだしのおなかをすべり、自分にある女と同じかたちをした暗がりへ、暁美ほむらは手をつける。
     鹿目まどかは手の甲を目にあてて、表情を見られまいとした。

     ……くちゅっ……

     魔女の毒に飼いならされた暁美ほむらとは違い、そこはほんのわずかに潤んでいるだけだった。すくいとり、敏感な尖りへぬらつきをまぶしていく。

    「……っ! あ、あぁ」

     鹿目まどかの吐息が熱を帯びていく。波紋がひろがるように全身がさざなみ立ち、シーツがくしゃくしゃになっていく。

     暁美ほむらは苦労してふとんにすきまを作り、鹿目まどかのそこをじっと目をこらして見つめる。いちごのように透明な赤色をした感覚器官だ。見ているだけで脳がとろけそうなほど、それはおいしそうにふくらんでいた。

     暁美ほむらはすこし胸が苦しくなった。まどかのそれは、あまりにも自分と違っていた。色素のうすいからだだからか、白い桃のような割れ目に、チェリーのような赤いひだの内側がかすかに見えている。果実ににうっすらとナイフで一本線を入れたような、ひかえめな切り口だ。そこから果汁がじわじわとしみだしてきている。

     おいしそう。場違いな感想が浮かんで消える。

     どう触ればいいのかは、自分の体で知っていた。人差し指と中指を使って、少しも傷をつけないようにそっと表面をなでると、鹿目まどかの体はたやすく弓なりになった。あまりの薬指と小指を、桃の切れ込みにとぷんとつけると、そこはゼリーをまぶしたみたいになっていた。

     熟れすぎた果実に指をつっこむのとちょうどそっくりのかたさで、鹿目まどかは胎内に暁美ほむらの指を受け入れた。

    「ん、ん・あ、あァ……!」

     ずぶずぶと、指と一緒に溺れていくように、鹿目まどかの体が跳ねる。


    「気持ちいい? まどか……」

     飢えた犬のように、そのおいしそうな股間へ、鼻先を持ってくる。生き物のかおりに脳天がしびれた。
     ショートケーキのかざりのようにとがったいちごへ唇を寄せる。濃密なぬめりを舌でかきわけた先に、ちょこんと感覚があった。

    「……ひゃあん……!」

     ……ちゅっ……じゅるっ……ちゅくっ……

     おいしい果汁をすするように、暁美ほむらの舌が動く。指も奥へ奥へもぐっていく。鹿目まどかの中は暁美ほむらと比べてずいぶん浅く、小指と薬指だけで奥へとどいた。

    「……ほむらちゃん、それ、すごい……!」

     知らなかった。鹿目まどかがそんな甘い声を出すなんて。いままでに聞いたどの言葉よりもからっぽで、底冷えがするほどの快さだ。もっと聞かせてほしい。もっと。もっと。

     暁美ほむらは顔じゅうはしたなく鹿目まどかの果汁で汚しながら、好物を掘り返す犬のように、ただただれろれろくちゅくちゅとめちゃくちゃに舌を動かした。

    「きもちい、だめぇ、あぁ……!」

     鹿目まどかの腿が閉じたりひらいたりを繰り返し、びくん! と強烈なふるえをはしらせてこわばった。

    「い、っちゃいそ、あぁ、わたし、もう、もう、んんくぅっ……!」

     びくびくとしなる動きが長く長く続き、糸の切れた人形のように横たわる。
     ひたいに珠の汗をうかべてとろんとこちらを見あげてきた顔には、深い満足があった。

    「……かわいいわ。まどか……」

     暁美ほむらは胸をおしつぶされるような愛くるしさをおぼえて、ぎゅうっと鹿目まどかを抱きしめる。ふわふわのおしりやなめらかな脂の乗った胸が、野の花のように頼りなく暁美ほむらに手折られていた。

    「ほむらちゃ……」

     ちいさな手が暁美ほむらの背中にまわされる。抱きしめあうって、なんて気持ちがいいのかしら。まるで心に触れている気分。春の野原のようにすがすがしくおだやかな気持ちが沸いてきて、いっとき暁美ほむらの心を洗った。でもそれも、すぐにどろりと淀んでにごった。

     ――とろ火で煮込んだ暁美ほむらの獣の渇望が、魔女の毒に染まる。

     暁美ほむらは瞳の色さえ変えて、鹿目まどかの上にのしかかった。

    「きゃっ……! ほむらちゃん……!?」

     さきほど満たした器が、もうからっぽになっていた。情欲でジェラートのようにぐずぐずに溶けた下半身を、鹿目まどかの股間にすりつける。

     暁美ほむらは、いちご色の突起に、自分のそれをすり合わせた。

    「ひぅぅん!」

     たまらない、おいしい、鹿目まどかの身体。食べてしまいたい。ひとつになりたい。正体不明の強烈な欲求に突き動かされて、暁美ほむらが腰をグラインドさせる。

    「きゃあぁっ! あっ……うぅ……!」

     ……ぬちゅ、ぐちゅ、ちゅぐっ……

     天まで突き抜けるような味がする。ぐりぐりと容赦なく口同士をすり合わせ、こすりつけた。性急に食欲を満たすようにしてかきこんでいく。このおいしいものは、全部暁美ほむらのものだ。他のものには、渡しはしない。たとえ魔女でも、許しはしない。

     一滴ものこさず快楽を絞りつくすようにきつく身体どうしを絡めあわせると、限界はすぐだった。

     ――びくびくびくんっ!

     強烈な震えが暁美ほむらの身体をかけぬける。痙攣につられるようにして、鹿目まどかの身体も達する。

    「……ああぁっ、……はあっ……はあっ……」

     息をつく鹿目まどかだったが、暁美ほむらの欲求は衰えを知らない。
     すぐにまた身体を重ねる。刺激を求めて、より深い角度へ、無理に足をねじまげていく。

    「ほむらちゃん!? どうし……」

     抗議の声はそれだけだった。暁美ほむらの瞳を見てすべてを察したらしい鹿目まどかが、ふっと身体の力を抜く。

    「……いいよ。ほむらちゃんのしたいこと、なんでもして」

     鹿目まどかの腕に抱かれて、暁美ほむらは底なし沼に溺れていく。

     ……ぐっ、ぬっ、ちゅ、ちゅっ、ぐちゅっ……

     腰の下を押し付けあい、脚を絡ませあって、お互いの気持ちいいところを無心に探す。ふくふくと柔らかい鹿目まどかの身体が熱っぽく寄り添ってくるだけでも信じられないぐらい気持ちいいのに、直線的な刺激を加えられてはなおさらだった。

    「あっ、うっ、ううぅっ……!」

     何度目かも分からない絶頂が、暁美ほむらを焼き尽くす。

    ***

     力を失い、眠るように横たわる暁美ほむらの頬を撫でて。

     鹿目まどかは、体液でぬらつく指を、暁美ほむらの首筋に這わせた。
     魔女のくちづけに、べったりと体液がなすりつけられる。
     すると黒い煙をあげて、暁美ほむらの魔女のくちづけは、空中に溶け、消えていった。

    ***

    「ほむらちゃんは、何度も何度も私を受け止めてくれたんだよ」

     枕を並べて、鹿目まどかがおだやかに語る。

    「私、おかしくなっちゃってたんだね。苦しくて苦しくて、ほむらちゃんにいっぱいいっぱいねだったの。数え切れないぐらい何度も気持ちよくしてもらって……それでも直らなくって……ほむらちゃんはいっぱい泣いて、何回も私に謝って……『自分のせいだ』って言ってきかなくって……
     ほむらちゃんの流した涙がね、私の首筋にまで届いたの。
     そうしたら、じゅって音を立てて、やっと消えてくれたんだよ」

    「そうだったの……」

    「あとはね、私も寝ちゃったから、よく覚えてないの。気づいたら、体中ぴっかぴかで、自分のベッドで眠ってた。きっとほむらちゃんが、最後までがんばってくれたおかげだね」

     ありがとう。鹿目まどかがはにかんでみせる。

    「きっと、涙とか、そういうのに反応したんだと思って。でも、ほむらちゃんが自分で流した涙じゃきかないみたいで。私も一生懸命なみだを流そうとしたんだけど……でも、泣けるわけないよね。だって、こんなに幸せなんだもん」

     私、ほむらちゃんと抱き合えて、とっても嬉しかったんだよ。

    「それでね、一生懸命考えたの。どうすれば治してあげられるんだろう、私がしてもらったみたいに、いっぱいいっぱい気持ちよくしてあげたらいいのかな? って。でもそうはならなくて」

     鹿目まどかは悲しそうに顔を伏せる。

    「偶然だったんだよ。ぬるぬるの手で触ったら、あっという間に溶けちゃった。変だよね。そんなのでいいなら、私が最初になめたときに消えてくれてもよかったのに」

    「そう。きっと、何かが違うのね」

    「何だろうね?」

     その答えを、暁美ほむらは知っているような気がした。
     今なら、あの魔女の嘆きの正体も推測できる。

     きっと、愛を欲していたのだろう。肉欲の宴のかたすみで、ひとりベッドの上で膝を抱えていたのは、そうしたわけだったのだ。

     御伽噺の世界では、

     ――呪いを解くのは、いつだって、本物の愛なのだから。




    (終)



    ほむらちゃんが魔女に調教されて悪堕ちしかけ、それをまどかさんが救ってくれたりするようなお話。
    文字詰めすぎ? もう少し整理すべき?

    2012.2.27 ちょっと追加。
    愛欲の魔女Luise(ルイーゼ)。その性質は嫉妬。ただ一人愛した男の寵愛を求め、ありとあらゆる性愛の宴を開き続ける。この魔女を倒したくば、真実の愛を示せばよい。
    手下1。役割は犬。魔女の機嫌を損ねぬよう、尻尾を振り続ける運命。
    手下2。役割は媚薬。人を性愛の宴に引きずりこんで理性をどろどろに溶かす。

    2012.2.28 追加。このへんからエロ陵辱入れてきたい。

    2012.3.4 細かいところ推敲。

    2012.3.5 追加。

    2012.3.6 追加。中東の寝室ってどんなだろ。資料あればください。

    2012.3.10 追加と修正。そういえばリボンで拘束されていると停止しても意味ないんでしたね。

    2012.3.12 追加。触手陵辱→ほむら無双→ほむまどって展開で考え中。
         思いついたところから書いてって間を埋める予定。

    2012.4.20 追加。陵辱といえばこれ!欝度をあげてみました。 

    2012.4.24 追加。ほむほむまどまど。

    2012.5.16 追加。まどほむまどほむ。もう少し陵辱度も上げたい。大人数でよってたかって的な。

    2012.5.18 完結。文字を削って、全体を整えました。ひとまずこれで終わり!陵辱度の高いものはまた違う機会に。




    以下、pixiv投稿用にちょろっといじったもの。

    ***

    鹿目まどかが小さな背を丸めて、授業に聞き入っている。暁美ほむらの席に、彼女の姿はない。
     時を停め続けて鹿目まどかを自宅へ戻し、痕跡を消しつくして、彼女の魔力は底をついた。早急な補給の手段を求め、飢えた狼のように徘徊する彼女のことなど、鹿目まどかには知るよしもない。

    「ほむらちゃん……」

    (なんだか、昨日、ほむらちゃんに、逢った、ような……)

     暁美ほむらの懇願と相当数のグリーフシードによる買収とで、彼女の記憶はキュウべえの手を借り、綺麗に消し去られていた。だが、鹿目まどかの魂は覚えていた。

    (なんだか、ほむらちゃんに、ありがとう、って言い忘れてる。そんな気がする)

     
    ***
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    Date:2012/05/18
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    Thema:二次創作:小説
    Janre:小説・文学

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